この記事のポイント
- EvilTokensは正規の認証コード入力を悪用する詐欺基盤。本人の認証を攻撃者側のアクセス承認へ誘導します。
- Microsoftは1万2,000件超のメールボックス、1万超の組織の侵害を確認し、基盤への妨害を発表しました。
- AIは詐欺メールの作成や侵入後の分析を支援。認証方式に加え、不審なメール転送なども点検対象です。
Microsoftの公式分析から、認証の仕組みを悪用した攻撃を紹介します。侵入の経路と、組織側で点検する範囲を整理します。
EvilTokensは正規のデバイスコード認証を悪用する
EvilTokensは、攻撃用のテンプレートや管理画面を提供するフィッシング・アズ・ア・サービス(PhaaS)です。Microsoftは、開発・支援を担った攻撃者をStorm-2992として追跡しています。サービスの初期費用は1,500ドル、継続利用料は月500ドルと報告されています。
狙われたのは、スマートテレビや会議端末などで使われる正規のデバイスコード認証です。利用者が別の端末のブラウザーで短いコードを入力してサインインする仕組みですが、攻撃者が先に認証を開始し、そのコードをメールなどで利用者へ渡すと、利用者の認証操作によって攻撃者側のセッションが承認される場合があります。パスワードを渡さなくてもアカウントへ侵入され得る手口です。
Microsoftによると、EvilTokensのAI機能は、標的に合わせたメール文面の作成や、侵入後のメールボックス分析、価値の高い利用者の特定などを支援しました。攻撃の全工程をAIが自動実行した、という説明ではありません。

侵害は1万組織超、認証方式と利用範囲を点検
Microsoftは2026年9月22日、Digital Crimes Unitがパートナーと連携してEvilTokensの運用基盤を妨害したと発表しました。確認された侵害はメールボックス1万2,000件超、組織1万超。米国、カナダ、英国、オーストラリア、インド、フランスなどで被害が観測され、流通、建設、金融、不動産、高等教育、医療など複数の業界が含まれます。
パスワード以外の方法も組み合わせる多要素認証(MFA)は、引き続き重要な対策です。デバイスコード認証では、利用者が別の端末で認証を完了するため、要求を開始した側と本人の操作を結び付けにくいことが悪用されました。MicrosoftもMFAを重要な対策として挙げ、可能な場合はデバイスコードフローをブロックし、必要な場合は対象を限定するよう勧めています。
企業はデバイスコード利用と侵入後の痕跡を確認する
まず、アカウントやアクセス権を管理するMicrosoft Entra IDなどで、デバイスコード認証が許可されている範囲を確認するとよいでしょう。業務上必要な場合は、利用する端末やアカウントに例外を絞ります。あわせて、フィッシングに強いパスキーやFIDO認証の導入、疑わしいサインイン、受信トレイルールの新設、メール転送や大量ダウンロードの監視を検討できます。Microsoftはリンク先の危険を調べるSafe Linksや、不審な受信トレイルールの検知も案内しています。
AIを使った攻撃では、侵入後にメールの内容を分析して次の標的を選ぶ動きも報告されています。認証方式だけでなく、侵害後のアカウント活動を検知する運用も点検対象です。
出典・参考資料:Microsoftの公式分析。
まとめ: 承認画面と侵入後の活動を併せて確認
認証を管理する方にとっては、許可されたアプリと実際に渡る権限を照合する材料になります。多要素認証の有無だけで判定せず、利用者が承認する画面と管理側のログを併せて確認するとよいでしょう。
※ 2026年9月時点の情報です。
AIを悪用する攻撃・AI自体の脆弱性という観点では、AIコーディングエージェントの新種の脆弱性「GitSpawn」が見つかった例も参考になります。攻撃の入口と侵入後の動きを分け、既存の監視でどこまで把握できるかを整理するとよいでしょう。