この記事のポイント
- MITの研究チームが、Claude Opus 4.7のエージェント13体を無人島に30時間放置する実験を行いました。
- 目標を与えられなくても、塔作りや名前を積み木で綴るなど自発的な「遊び」が見られました。
- 遊んだ経験のあるエージェントは、ない場合より後の課題で明確に好成績でした(査読前の論文)。
MITの研究チームが2026年10月、AIコーディングエージェントを達成すべき課題を与えない無人島のシミュレーションに30時間放置する実験の論文を公開しました。放置されたエージェントが何を始め、その経験がその後の課題成績にどう影響したかを、この論文の内容から整理します。
※ 2026年10月時点の情報です(arXiv投稿のプレプリントで、査読前の内容です)。
放置された13体が、島で自分から始めたこと
研究チームは、AIコーディングアシスタント「Claude Code」をClaude Opus 4.7で動かし、仮想の身体と長期記憶を持たせた仕組みを「Eko」と名付けました。これを13体、未知の島に1体ずつ配置し、タスクも報酬も一切指定せず30時間動かし続けました。
目標がなくても、エージェントたちは自分から活動を始めました。ブロックを積んで塔を作る、島の高い岩場によじ登る、地面にマンダラや文字の模様を描く——あるエージェントはリングをゴールに見立てたバスケットボールや、岩をピンにしたボウリングのような遊びまで考え出しました。8個のブロックを「見張り」に見立てた記念碑を築き、地面に足をつけずに一周する自分ルールの挑戦をした個体や、誤って海に落としたリングを悼んで石のハート像を作った個体もいました。
研究チームはこうした行動を、「自分でルールを作る」「形を変えながら繰り返す」「見立てで意味づけする」「それ自体が目的になっている」という遊びの4つの特徴に沿って採点しました。Claude Opus 4.7で動くエージェントは、比較のために動かした小型モデル(Haiku 4.5)との各10時間分の比較で、平均でおよそ5倍高いスコアを記録しています。
「遊んだ」経験が、後の課題の成績にもつながった
研究チームはさらに、30時間島で過ごしたエージェントと、同じ初期設定のまま島の経験を持たない「0時間」のエージェントを、4種類の課題で比較しました。5段の塔を複数作る課題では、30時間組の62%(13体中8体)が2つを超える塔を完成させた一方、経験なしの組は15%(13体中2体)にとどまりました。高い足場に物を置く課題でも、平均個数は30時間組が10.3個、経験なしの組が3.5個と差が開きました。
ただし良い面ばかりではありません。最も高い塔を作る課題では両グループの成績が近く、30時間過ごしたエージェントの一部はむしろ経験なしの個体より低い記録(4段)しか作れませんでした。研究チームが特定の技術に関する記述を記憶ファイルから意図的に消す実験を行うと、該当する課題の成績が実際に下がることを確認しており、経験が記憶を通じて技能として引き継がれたことを示しています。一方で、誤った思い込み(例:「ブロックは積み重ねられない」という誤記)が記憶に残ったままだと、むしろ成績を下げる例も見つかっています。

まとめ
企業のAI担当者にとっては、長時間自律的に動くAIエージェントに持続的な記憶(メモを書き残す仕組み)を持たせると、経験が技能として積み上がりうる一方、誤った記憶が性能を下げるリスクも抱えることを示す研究として読めます。本稿はMITによる査読前のプレプリントで、実験対象も13体と規模は大きくなく、今後の追試や査読を待つ段階です。AIエージェントそのものの特徴や選び方を整理したAIエージェントの選び方、主要6サービスを3タイプで整理も、検討する役割や用途を整理する参考になります。