この記事のポイント
- リコーの360度映像から建物を3D化する技術が東京電力PGに導入され、保全業務で運用を開始しました。
- 360度カメラの映像をアップロードすると、半日程度でモデルを作成でき、特徴の少ない壁や床の欠損も抑えるとしています。
- 東京電力PGは2026年6月から主に事務所建物で実証を進め、建物の状況や関連情報の遠隔確認に活用しています。
リコーとリコージャパンが2026年10月26日、360度カメラの映像から建物の3Dモデルを生成する独自技術を、東京電力パワーグリッドの建物保全業務に導入したと発表しました。インフラの老朽化や熟練技術者の減少に対応する取り組みです。
建物の状況と関連情報を離れた場所から確認
電力インフラを管理する東京電力PGでは、現場確認や関係者間の情報共有を効率化することが課題になっていました。今回導入された仕組みでは、建物名・階数・部屋名などの情報を3D空間上で一元管理できるため、現地に行かずに建物の状況や関連情報を確認できるようになります。工事や設備変更による変化も、タイムリーに3Dデジタルツイン(現実の空間をデジタル上で再現し、情報と結び付ける仕組み)へ反映していく想定です。
360度カメラ映像からAIが壁や床の構造を補完
レーザースキャナーなどの専用機材を使う代わりに、360度カメラで現場を移動しながら撮影します。リコー独自の位置推定技術と、周囲の壁や床のつながり・部屋全体の構造をAIが推定して補完する技術を組み合わせることで、白い壁や床など特徴の少ない場所でも欠損を抑えられるとしています(リコーの2026年9月時点の調査では、3Dスキャナの正解データと比べて100mm以上の誤差がある領域の割合=欠損率が従来より少ないことを確認)。

生成されたモデルはサービス「RICOH Digital Twin Workplace」上で扱われ、映像をアップロードすると約半日で3Dモデルが完成します。リコーは、従来の専用機材による方法では撮影からモデル生成まで数日かかっていたと説明しています。比較する工程が同一とは限らず、現場作業全体が半日で終わるという意味ではありません。形状は面(メッシュ)で表現されるため、距離や面積の計測、断面の確認、設備同士の干渉チェックにも使えます。
企業のAI担当者にとっての参考点
東京電力PGは2026年6月から主に事務所用途の建物を対象に実証を進めており、対象拠点は今後順次拡大する予定です。リコーグループは建設・製造・施設管理など幅広い産業への展開も計画しているとしており、自社に設備点検や現場共有の負担が大きい部署があるなら、どの業務で現地確認の回数を減らせそうか、参考にしてみる価値があるでしょう。
まとめ
現場の情報を遠隔で確認する手段には、四足歩行ロボットによる工場巡回もあります。今回の取り組みは、撮影映像から建物の形状と関連情報を共有する点が特徴です。
建物保全を担当する方にとっては、現地でしか確認できない項目と、モデルで共有できる情報を分けて考える材料になります。撮影後の変更をどの頻度で反映するかも含め、実際の保全手順に合うかを確かめるとよいでしょう。
※ 2026年10月26日発表時点の情報です。