フィジカルAI

OpenAIのCodexで進む抗菌薬探索、AIが担うのは仮説とコードの支援

この記事のポイント

  • 候補分子を探すのはペンシルベニア大学の研究室が開発した専用モデルです。
  • ChatGPTとCodexは仮説づくりやコード、データ処理を支え、研究者が結果を確認します。
  • 候補分子には有効性・毒性・臨床試験などの検証が必要で、承認薬とは別段階です。

OpenAIが紹介した創薬研究の事例を読みます。専用モデルの探索と、研究者の仮説や実装を支援する役割を分けて整理します。

薬剤耐性菌問題とAI創薬の背景

薬剤耐性は感染症を治療しにくくする課題です。WHOによると、2021年は細菌性薬剤耐性に関連して推計471万人が亡くなりました(耐性が直接の死因となった数とは異なります)。ペンシルベニア大学の研究室は独自の深層学習モデルでゲノムやタンパク質のデータを調べ、抗菌薬候補を探します。OpenAIの紹介では、初期の候補探索を数年から数時間に短縮できる場合があるとしています。

ChatGPT・Codexが担っているのは仮説とコードの支援

ここで気になるのが、ChatGPTやCodexの役割です。候補分子の探索を担うのは研究室独自の深層学習モデルであり、ChatGPTとCodexが担っているのは次のような支援業務です。

  • 仮説のブレインストーミング
  • コードの作成・修正
  • データセットの処理
  • 解析結果の整理
  • 異なる専門分野をまたいだアイデアの接続

デ・ラ・フエンテ氏の研究室は、生物学・化学・コンピューターサイエンス・工学など出身分野の異なるメンバーで構成された「学際的なチーム」です。ChatGPTとCodexは専門分野の壁を越える橋渡し役になっており、専門用語の解説や手法の比較、大規模なゲノムデータセットの処理にも使われ、各メンバーが母語で作業できる点もハードルを下げているそうです。デ・ラ・フエンテ氏自身はChatGPTを「壁打ち相手」として使い、AIがすぐに情報へアクセスできる手軽さを評価しつつも、「もちろん、常に正確性を自分で確かめる必要があります」と釘を刺すことも忘れていません。

仮説とコードの作成を支援し実験で確かめる研究の流れ

AIが候補を見つけても、そこからが長い

候補分子が見つかったからといって、それがすぐに薬になるわけではありません。研究者はまず、その分子が標的の微生物を実際に殺すか、有効な量はどのくらいか、人間の細胞にどう影響するかを確認する必要があります。そこから化学者が有効性・安全性・安定性を高める最適化を行い、毒性が出る用量や耐性のできやすさ、体内動態まで検証。製造方法の確立、規制当局の審査、臨床試験を経て、ようやく承認薬として患者に届くのです。デ・ラ・フエンテ氏は「AI予測を検証するには、現実の実験が欠かせません」と強調しており、生物学という最も複雑な対象を理解し続けるには、AIと実験室での生物学研究が両輪で進む必要がある、という立場です。

出典・参考資料:OpenAI公式ブログの発表内容。

まとめ:探索支援と薬の有効性検証を分ける

創薬研究に関わる方は、候補探索モデルとChatGPT・Codexが支援する工程を分けて評価するとよいでしょう。候補が見つかっても薬として有効とは限らず、実験・安全性評価・臨床試験が続きます。

AI活用の別の事例としては、OpenAIのCodexが量子コンピュータの実験設計を代行した取り組みも報告されています。

OpenAIは創薬領域への関与をさらに広げており、創薬スタートアップOrchestra Bioを買収し研究チームRosalindを強化する動きも発表しています。

著者プロフィール

アバター画像

馬渡 徹郎 / Tetsuro Mawatari ホームページ

AI新規サービス開発や大手企業のAIエージェント導入支援をしています。