この記事のポイント
- 日俳連は、音声の学習・生成・利用それぞれで本人の事前の個別同意を求める自主基準を公表しました。
- 同意の有効期間は原則最長1年で、継続時は条件を再協議。長期制作など合理的な事情には例外があります。
- 通常の出演料とは別の対価に加え、暗号化・アクセス制限・利用記録など、音声データの管理も求めています。
日俳連が2026年10月15日に公表した「音声に関する生成AI利用ガイドライン(Ver 1.0)」を紹介します。音声合成を企画・発注する際に確認したい、同意の範囲・期間・データ管理を整理します。
学習・生成・利用の各段階で、目的を示して同意を得る
ガイドラインの核心は、学習・生成・利用の各段階で、本人からの事前の個別同意を必須にするという点です。「いかなる段階においても、対象となる音声の持ち主(実演家)に対して目的を明示し、事前の許諾を得ることを必須とします」と明記されています。
特に踏み込んでいるのが、一括同意の扱いです。第8条では「包括的又は広範な利用目的での事前同意を一括して取得する合意や契約(いわゆるバイアウト契約等)を、いかなる場合も行ってはなりません」とし、本ガイドライン上は無効と扱うとしています。口頭での同意や事後承諾も、同基準では無効と扱います(個別契約の法的効力を判定するものではありません)。
同意は原則1年、継続時は条件と対価を見直す
同意には有効期間もあります。第12条で「原則として最長1年」と定め、継続利用には対価や条件を再協議した上での更新同意が必要です(ゲーム・アニメ制作のように長期化する合理的事情がある場合は1年超も認められますが、無期限の同意は一切認められません)。
さらに第17条では、事業者側に音声データの暗号化・アクセス権限の最小化・利用ログの記録を求め、実演家が撤回を希望し事業者との合意が成立した場合には、合意日から30日以内のデータ削除と、該当モデルの速やかな利用停止を求めています。対価についても、通常の出演料とは別に、利用段階や用途に応じた報酬を支払うべきと定めています(第16条)。日俳連が自主的な基準として示したもので、国際俳優連盟(FIA)が提唱する「個別同意・透明性・公正な対価」の国際的な流れとも一致する内容です。

音声を発注する際の確認項目を整理する材料に
声優・俳優の声を使う企画では、利用する段階、目的、期間、多言語化の有無が、今回の基準と照らし合わせる項目になります。これらを発注先との確認事項として整理すると、どの利用について同意を得ているのかを共有しやすくなるでしょう。個別の契約の扱いは、ガイドラインの説明だけで決めず、契約内容に沿った確認が必要です。
まとめ:自主基準の内容と法的判断を分けて読む
日俳連が示したのは、事前同意、対価、管理体制などについての自主基準です。音声合成の導入を担当する方にとっては、技術の選定とは別に、どの声をどの範囲で利用するのかを整理する資料になります。発注先と利用目的や期間を共有したうえで、契約上の扱いは法務担当者などと確認するとよいでしょう。