この記事のポイント
- CHOPはMONAIを使いCT・MRIなどから小児心臓の3Dモデルを作成しています。
- 病院の紹介では、熟練者が約4時間かけた工程を数秒で処理できるとしています。
- モデルは手術計画を支援するもので、診断・治療判断や他施設での再現性を保証しません。
NVIDIAが紹介した小児病院の医療画像処理を読みます。モデル作成の成果と、専門家が検証する工程を分けて整理します。
CT・MRI・超音波の画像から、心臓の3Dモデルを数秒で生成
NVIDIAが2026年9月15日、公式ブログでCHOPの取り組みを紹介しました。生まれてくる子どものおよそ1%が先天性心疾患を抱えており、同じ症状は二つとないといわれます。CHOPの心臓専門医Matthew Jolley氏は「一人ひとり違う心臓に、既製品の器具を合わせるのが仕事。モデリングがあれば、手術室に入る前にそれを確かめられる」と述べています。CHOPの心臓モデリングサービスは、NVIDIAが共同開発したオープンソースの医療画像フレームワーク「MONAI」を基盤にしており、子どもの治療チームが既に持っているCT・MRI・3D超音波の画像から、心臓モデルを数秒で作成する事例が紹介されています。以前は熟練した研究助手が4時間かけて手作業で行っていた工程が、日常診療で使えるスピードまで短縮されました。具体的には、医療画像の可視化・解析用オープンソースソフト「3D Slicer」を拡張した「SlicerHeart」に加え、MONAI LabelとNVIDIAのAuto3DSegでセグメンテーション用のAIモデルを訓練しています。Jolley氏のチームは「10〜20組の画像とモデルのペアができれば、そこから訓練して適用を始められる」と話しており、機械学習がすでに日常業務の一部になっていることがうかがえます。

米国20施設以上に拡大、次はリアルタイムシミュレーション
この取り組みは米国内で広がりつつあり、20を超える小児病院が心臓モデリングのプログラムを運用しています。ボストン小児病院では、心臓外科手術の半数以上、年間およそ500件にモデリングが活用されており、CHOP自身も2026年に約200件のモデル作成を見込んでいます。米国には先天性心疾患を抱える人が約240万人いると推定されており、単独の企業や病院だけでは支えきれない規模の課題に、オープンソースという形で複数の医療機関が力を合わせている構図です。次の目標は、モデルの形を見るだけでなく「実際にその器具を入れたらどう動くか」まで手術前に把握することです。NVIDIAのWarp(GPU上で物理演算を行うPythonフレームワーク)を基盤にしたオープンソース物理エンジン「Newton」を心臓デバイスの挙動シミュレーションに応用する研究が、NVIDIAやオープンソースコミュニティと共同で進められています。GPUによる高速化で、最大4時間、複数パターンでは一晩がかりだったシミュレーションをほぼリアルタイムに近い速さまで縮められる見込みで、実現すればその場で複数の器具の適合具合を比較し、同じ診察日のうちに判断材料を得られるようになります。
出典・参考資料:NVIDIA公式ブログ。
まとめ:処理時間と医療判断を分けて見る
医療画像の研究やシステム運用に関わる方には、モデル作成と専門家による確認の分担が参考になります。処理時間の短縮から治療の安全性や他施設での適合は判断できません。対象画像と検証工程の違いを踏まえ、事例が示す成果の範囲を読むとよいでしょう。